車の買取価格は、2020年代前半の急騰を経て高い水準を保っています。
ただし、市場全体が一方向に上がり続けているわけではなく、車種や年式、需要先によって値動きが分かれているのが現在の姿です。
筆者コメント
筆者はこれまで複数台の売却や査定に立ち会い、ディーラー下取りと買取専門業者の間で数十万円から100万円近い差額が出るケースを繰り返し見てきました。
また、人気車種だけでなく走行距離15万kmを超えた車両の売却まで経験する中で、車種や条件によって相場の性質がまったく異なることも実感しています。
この記事は、そうした売却の現場で得た視点を土台に、市場データと合わせて書いています。
相場全体のニュースだけで売り時を決めるのはリスクが大きい。
この記事では、過去数年の価格推移と高騰の背景を整理した上で、高値が続く条件と下落に向かうサイン、自分の車の相場を確認する具体的な方法、そして今売るか待つかの判断軸までをまとめました。
市場のデータを追うだけでなく、自車の条件と重ね合わせて考えるための材料を揃えています。
車買取価格は高値圏でも一方向には動かない

車買取価格はコロナ禍以降に大きく上昇し、2026年時点でも高い水準にあります。
ここで最初に押さえておきたいのは、市場全体の平均価格、オークションの価格指数、そして自分の車の査定額は、それぞれ別の数字だという点です。
ニュースで報じられる相場の上昇がそのまま自車の価値に反映されるとは限りません。
高値圏にある車買取市場の動き
過去数年の推移は高騰後の高止まりが中心
中古車買取価格が大きく動き始めたのは2021年頃からです。
半導体不足による新車の供給停滞が引き金となり、新車を待てないユーザーが中古車に流れたことで需要が急増しました。
そこに円安と海外需要の拡大が重なり、相場は急騰しました。
中古車オークション最大手のUSSが公表しているデータを時系列で見ると、この数年の価格の流れが分かりやすくなります。
| 時期 | USS平均成約単価 | 市場の動き |
|---|---|---|
| 2023年 | 約113万円 | 新車供給は一部回復も、輸出需要の拡大で高値が継続 |
| 2024年 | 約120.6万円 | 円安と海外バイヤーの仕入れ意欲で相場を下支え |
| 2025年通期 | 約125.5万円(前年比+4.1%) | 出品台数が過去最高を更新しても単価は上昇 |
| 2026年1月 | 134.6万円(前年比+7.7%) | 月間ベースで過去最高を記録 |
(参考:USS月次オークションデータ 日本自動車会議所まとめ)
この表で注目すべきは、2025年のオークション出品台数が前年比11.3%増の約346万台と過去最高を記録しているにもかかわらず、平均成約単価も上がっている点です。
市場に出回る中古車が増えても値段が下がらないということは、それだけ買い手側の需要が強いことを意味しています。
ただし、ここで一つ注意が必要です。
オークネットが算出している中古車市場価格指数を見ると、前月比でマイナスになる月も出ています。
平均取引価格が横ばいでも価格指数が下がるケースがあるため、一つの数字だけを見て市場の方向感を決めつけないことが大切です。
筆者コメント
筆者が相場を追い続けている中でも、月単位の上下に振り回されるよりも、数か月から半年単位のトレンドを見た方が売却判断の精度は上がると感じています。
(参考:オークネット 中古車市場価格指数)
2026年は車種ごとの差が広がっている
市場全体の平均単価は上昇傾向ですが、すべての車種が一様に値上がりしているわけではありません。
2026年に入り、車種による価格差はさらに広がっています。
人気の高いミニバンやSUV、N-BOXのような販売台数トップの軽自動車は、買取業者間の取り合いになりやすく、高値が維持されやすい傾向にあります。
筆者コメント
筆者が人気車種の査定に立ち会ったときも、複数業者の提示額が数万円の僅差で競り合い、結果として相場上限に近い金額で決着することが多くありました。
こうした車種は業者同士の競争が激しいため、適切な方法で複数社に査定を依頼すれば、ネットの相場表で表示される価格帯の上限付近まで到達する可能性があります。
一方で、年式が古く走行距離の多い車両は国内小売での需要が限られるため、ディーラー下取りではごく低い金額を提示されることも珍しくありません。
ただし、こうした車両でも海外輸出向けの需要がつく場合は、下取りの数倍の値がつくことがあります。
筆者コメント
筆者も走行15万kmを超えた古年式車の売却に関わった際、ディーラー下取り5万円に対して買取では11万円以上の値がつき、売却ルートの違いで価格が大きく変わる現実を経験しました。
市場全体の平均が上がっているニュースを見て安心するのではなく、自分の車がどのカテゴリに入るのかを冷静に見極めることが、売り時の判断では欠かせません。
車買取価格が上がった主な理由

ここまでの推移を踏まえて、なぜ価格が上がったのかを整理します。
高騰の背景を理解しておくと、今後どんな条件が変われば相場が動くかを見通しやすくなります。
中古車価格を押し上げている主な要因
新車価格と供給状況が中古車需要を押し上げる
新車の車両本体価格は、原材料費の上昇や安全装備の標準化、電動化対応などを背景に年々高くなっています。
かつてはコンパクトカーなら150万円前後で手が届いた価格帯も、今では200万円を超えることが珍しくありません。
新車が高くなれば手の届きやすい中古車へ需要が流れるのは自然な流れで、この構造が中古車全体の相場を支えています。
もう一つ見逃せないのは、2020年のコロナ禍で新車販売台数が大きく落ち込んだ影響です。
新車購入から5年目の車検前に乗り換える人が多いため、2020年に新車が売れなかった分、2025年前後は高年式の中古車、いわゆる5年落ち車両の流通量が構造的に少なくなっています。
日本自動車販売協会連合会の統計によると、2025年の新車販売台数は前年比3.3%増の約456万台でしたが、コロナ前の2019年水準(約477万台)にはまだ届いていません。
2025年度の新車販売台数も前年度比0.9%減の約453万台とやや後退しており、新車供給の完全な正常化には至っていない状況です。
この供給不足が続く限り、中古車への需要圧力は残り続けます。
円安と海外需要が相場を下支えする
国内の供給事情と並んで大きな要因が、海外からの中古車需要です。
日本車は整備品質が高く、故障が少ないという評価が海外で定着しており、中東やアフリカ、東南アジアを中心に根強い人気があります。
円安が進むと海外のバイヤーにとって日本の中古車が割安に映るため、仕入れ意欲がさらに高まります。
財務省貿易統計のデータを基にした業界集計では、2024年の中古乗用車輸出台数は約136万台にのぼり、2025年にはさらに増えて前年比9.1%増の約170万8,000台と、3年連続で過去最高を更新しました。
仕向け先ではUAEが首位に浮上し、アフリカ向けの輸出も大きく伸びています。
この海外需要がオークション相場を押し上げるため、国内の買取価格にも波及しています。
筆者コメント
筆者の体感でも、輸出業者が積極的に入札に参加する車種ではオークション価格が国内需要だけでは説明しにくい水準まで上がるケースがあり、それが買取業者の提示額にも反映されていると感じます。
ただし、為替は政策や国際情勢によって急変することもあるため、円安が永続する前提で売却判断を組み立てるのは避けた方が安全です。
輸出需要に支えられた高値は、円高に振れれば比較的早く調整が入る可能性がある点も頭に入れておくと冷静な判断ができます。
買取価格は季節と車両条件でも変わる

市場全体のトレンドを確認した上で、次に見るべきなのは自車の個別条件です。
ここを見落とすと、相場上昇を待っている間に自車の価値が下がるという本末転倒が起きかねません。
筆者コメント
これは筆者が売却の現場で最も強く実感してきた点でもあります。
自車の価格を左右するタイミング
年式や走行距離は待つほど不利になりやすい
車の査定価格は、年式が1年古くなるごとに、走行距離が伸びるごとに下がっていきます。
これは市場全体の相場がどう動こうと変わらない、車両固有の減価です。
特に影響が大きいのは、年式が3年、5年、7年といった節目を超えるとき、走行距離が5万kmや10万kmの大台を越えるとき、そして車検の残り期間が短くなったときです。
仮に市場全体の相場が半年で5%上がったとしても、その間に自車の年式が1年分進み走行距離が5,000km増えれば、車両側の減価がそれを上回ることも珍しくありません。
筆者コメント
筆者が複数台の売却を通じて実感しているのは、市場の上昇を待って得をするケースよりも、車両の経年による減価の方がインパクトは大きいケースの方が多いという点です。
相場全体が上がるかどうかを予測するのは難しいですが、自車の年式と走行距離は確実に進んでいきます。
この確実な減価と不確実な市場の上昇を同じ天秤にかけたとき、どちらのリスクが大きいかは冷静に考えておく必要があります。
モデルチェンジと需要期で価格が動く
車両の経年劣化以外にも、買取価格が動くタイミングにはパターンがあります。
| 価格が上がりやすい場面 | 価格が下がりやすい場面 | |
|---|---|---|
| 季節 | 1〜3月(年度末の需要期) | 4〜5月(需要期の反動で落ち着く) |
| モデルチェンジ | フルモデルチェンジの発表前 | 新型発売後(旧型の需要が減りやすい) |
| 決算期 | 買取業者の仕入れ強化時期 | 在庫が積み上がる時期 |
1〜3月は新生活に向けた中古車需要が高まり、買取業者も在庫確保のために仕入れ意欲が上がります。
筆者コメント
筆者が2月に売却した車両でも、業者の反応や入札の熱量から需要期の後押しを実感する場面がありました。
自分の車種にフルモデルチェンジの情報が出ている場合は、新型の発売後に旧モデルの相場が下がる可能性が高いため、発表前に動いた方が有利になりやすいです。
モデルチェンジのスケジュールは自動車メーカーの公式サイトや業界ニュースで事前に確認できるため、売却を検討しているなら自車の車種に関する情報はこまめにチェックしておくと安心です。
逆に言えば、モデルチェンジの予定がなく、年式や走行距離の節目までまだ余裕がある場合は、需要期に合わせて売却時期を選ぶ余地もあります。
ただし、需要期を待つことで得られる上乗せ幅と、その間の走行距離増加による減価をあらかじめ天秤にかけておくことが前提です。
中古車買取価格の高騰はいつまで続くのか

この問いに対して明確な期限を断定できる人はいません。
ただし、高値が続きやすい条件と下落に転じるサインを分けて整理しておけば、今後のニュースや市場データを見たときに自分で判断するための材料になります。
高値継続と下落を判断する材料
高値が続きやすい条件
- 円安基調が継続し、海外バイヤーの仕入れ意欲が衰えない
- 新車の供給が正常化しきらず、中古車への代替需要が残る
- ミニバンやSUV、軽トールワゴンなど人気車種の中古車供給が不足している
- 2020年の新車販売減少の影響で5年落ち車両の流通量が構造的に少ない
下落に転じるときのチェックポイント
- 円高方向への反転が定着し、輸出需要が減少に向かう
- 新車の納期が大幅に短縮され、新車への乗り換えが活発化する
- オークション出品台数の増加ペースに成約率が追いつかなくなる
- 自車の車種にフルモデルチェンジや大幅改良の発表がある
これらの条件を見比べると、2026年時点では高値を支える材料がまだ複数残っている状況です。
円安基調は当面続く見通しが強く、輸出需要が急に減るシナリオは考えにくいでしょう。
また、5年落ち車両の不足という構造的な問題は2020年の新車販売台数に紐づいているため、短期間では解消しません。
一方で、変化の兆しも見え始めています。
USSの2026年7月データでは、出品台数が前年比15%増に対して成約台数は10.8%増にとどまり、成約率は63.8%と前年の66.2%から2.4ポイント低下しました。
成約単価は134万5千円と依然として高水準を維持していますが、出品の増加に成約が追いつかなくなるこのパターンが続けば、どこかのタイミングで価格の調整局面に入る可能性は否定できません。
また、2026年に入って登録車の新車販売台数が前年同月比でマイナスになる月が続いている点も気になるところです。
新車が売れないと下取りに回る中古車も減るため、中古車の流通量が絞られ、かえって相場が高止まりするという逆の動きも起こり得ます。
市場の見通しは一方向に単純化できないからこそ、自分の車の条件と照らし合わせた個別の判断が重要になります。
高騰がいつまで続くかを当てようとするよりも、自車にとっての下落リスク(年式・走行距離の進行、モデルチェンジの有無)を具体的に確認する方が、売却判断の精度は上がります。
自分の車の価格推移を調べる方法

市場全体の動向を把握した上で、次にやるべきなのは自分の車の相場を具体的に確認する作業です。
相場表とデータベースとシミュレーションを使い分ける
自車の価格推移を確認する方法はいくつかありますが、それぞれ得意なことと限界が異なります。
違いを理解して使い分けることが重要です。
| わかること | 注意点 | |
|---|---|---|
| 中古車相場表 | 現在の平均的な買取価格帯 | 車両の状態やオプションは反映されない |
| 過去の取引データベース | 過去数か月から数年の価格推移 | 現在の査定額とは一致しない |
| オンラインシミュレーション | 個人情報なしで概算価格をすぐ確認できる | 予測値であり保証額ではない |
| 実際の査定(買取業者への依頼) | 自車の状態を反映した現在の提示額 | 1社だけでは相場が見えにくい |
個人情報を入力せずに概算を知りたい場合は、メーカー公式の下取り参考価格シミュレーションや買取相場サイトの簡易検索が手軽です。
車種、年式、走行距離を入力すれば数分で目安の価格帯を確認できます。
査定を申し込む前の段階で、自車がどのくらいの水準にあるのかをざっくりつかんでおくには十分使えます。
ただし、ここで得られる数字はあくまで概算であり、実際の査定額と同じとは限りません。
筆者コメント
筆者の経験でも、複数のシミュレーションで表示された価格帯と、実際に買取業者から提示された査定額には開きがありました。
特に、車両の状態、オプション装備、ボディカラーの人気度といった要素はシミュレーションには反映されにくいため、概算価格よりも高くなることも低くなることもあります。
シミュレーションは相場帯の把握と、足切りライン(これ以下なら売らないという最低基準)を事前に考えるために使い、売却の意思が固まった段階では実際の査定を複数社から受けて比較するのが現実的な流れです。
相場表やデータベースを見るときは、現在の価格だけでなく過去数か月の推移を確認しておくことをおすすめします。
自車の車種が上昇傾向にあるのか、横ばいなのか、あるいは下がり始めているのか、方向感をつかめるからです。
推移が下降気味であれば早めに査定を受ける判断材料になりますし、上昇傾向であっても年式の節目が迫っている場合は待つリスクの方が大きいこともあります。
もう一点、相場確認で意識しておきたいのは、ネット上のシミュレーションや相場表の数字と、実際に複数の買取業者を現場で競わせたときの査定額には差が出るという現実です。
筆者コメント
筆者の経験上、事前のネット相場で大まかな水準を把握しておくことは非常に有用ですが、実際の売却額はその概算を上回ることも下回ることもあります。
相場確認はあくまで準備段階として使い、最終的な売却判断は実際の査定額を見てから行う。
この順番を守ることで、情報に振り回されずに冷静な判断ができます。
今売るか待つかは相場全体だけで決めない

ここまで見てきたように、車買取価格の推移には複数の要因が絡み合っています。
市場全体の相場、車種ごとの需給バランス、自車の年式や走行距離、季節要因、モデルチェンジのタイミング。
これらを一つずつ確認した上で総合的に判断するのが、後悔の少ない売却につながります。
筆者コメント
筆者が複数台の売却を通じて感じているのは、相場のニュースに振り回されて判断を先延ばしにするよりも、自車の現在価格を正確に把握して動いた方が、結果として良い条件になることが多いということです。
判断に迷ったときは、以下の手順で整理してみてください。
- シミュレーションや相場表で自車のおおよその価格帯を把握する
- 年式や走行距離の節目が近づいていないか確認する
- 自車の車種にモデルチェンジの予定がないか調べる
- 需要期(1〜3月)との距離を考慮する
- 上記を踏まえた上で実際の査定を受け、現在の提示額を確認する
ネット上の相場データで方向感をつかむのは大切ですが、そこで得られる数字は目安にすぎません。
実際に複数社から査定を受けてみると、ネットの概算では見えなかった差が開くことがあります。
筆者コメント
筆者が繰り返し見てきた中で特に強く感じるのは、「もう少し待てば上がるかも」という期待で売却を先延ばしにした結果、年式の節目を越えてしまったり、走行距離が大台に乗ってしまったりするケースのもったいなさです。
市場が数%上がる可能性に賭けるよりも、今の条件で最大限の価格を引き出す方が、現実的な選択になることが多いです。
相場が高いから待つ、ではなく、自車の条件と市場の状況を重ね合わせて判断する。この視点を持っておけば、市場がどう動いても納得のいく売却時期を選びやすくなります。
まとめ
この記事で整理してきた判断のポイントを振り返ります。
| 内容 | |
|---|---|
| 市場全体の水準 | 2026年時点では高値圏だが、車種や指標によって上下動がある |
| 平均価格と査定額の違い | 市場の平均と個別車両の査定額は別物として扱う |
| 高値の持続要因 | 円安、海外輸出需要、新車供給の回復途上、5年落ち車両の不足 |
| 下落のサイン | 円高反転、新車納期の短縮、オークション成約率の低下 |
| 待つリスク | 市場上昇を待つ間にも自車は年式が進み走行距離が増える |
| 相場確認の使い分け | シミュレーションは概算把握に、確定額は実査定で判断する |
市場が高いか安いかだけで売り時を決めると、自車の経年劣化を見落としやすくなります。
相場表やシミュレーションで方向感をつかんだら、そこで終わりにせず、実際の査定で自車の現在価値を確認するところまでを一つの流れとして捉えてください。
相場全体のデータと自車の条件を重ね合わせて、自分の判断軸で売却時期を決める。
市場の平均値がどう動こうと、年式と走行距離は確実に進んでいきます。
不確実な市場の未来を当てようとするよりも、今の自車の価値を正確に知ることの方が、売却判断では確かな材料になります。
